

【ゲスト紹介】
会社名:株式会社 能作
お名前:杉浦優子様
ご紹介:富山県高岡市にかる鋳造メーカー(高岡は銅やアルミを中心で銅器の長い歴史のある地域)
紹介:
創業当時は仏具・花器などを作り、近年はインテリア雑貨などを中心に製作され、技術力と美術性の高さから数々のメディア(夢の扉、めざましTV、NHKetc)から取材を受け紹介されています。
ファンは国内のみならず、海外迄広がりオリジナルデザインのベルがニューヨーク近代美術館の販売品に認定されています。そのスタイリッシュさを反映して東京パレスホテルに出店、又、おしゃれの最先端をいく表参道で展示会(GYRE(ジャイル)というファッション複合ビルで行った能作展)を開催されています。
技術力の高さの裏づけとしては日本鋳造工学会より「Casting of the year賞」を受賞され、富山県からも「中小企業元気とやま賞」栄えある第1回目を受賞されました。又、経済産業省「元気なモノ作り中小企業300社」にも認定された輝かしい会社です。
製造方法は生型鋳造法を中心に自硬化鋳造法、ロストワックス鋳造法、シリコン鋳型鋳造法などです。今回はトリンプ世相反映ブラ作りに選ばれた女性鋳物職人杉原優子さんを訪ねました。
Q:女性で鋳造工場でのお仕事ですが、他社で設計にはおられますが、製造の仕事は珍しいですね。入社の動機など教えていただけますか?
A:元々、物作りに興味はあり、手を動かす事が好きでした。美術大学の鋳造研究室で先生と出会い、美術鋳物、シリコン鋳造などに惹かれて行きました。H19年に大学を卒業して4月に入社し、5年目になります。設計などの部署ではなく製造を希望しました。製造部では他の部署にもう一人女性がおります。
Q:体力仕事ですが、体力面、汚れることなどについてはいかがですか?
A:まず、汚れることは気にならないです。そうでないとやっていけません。真鍮の仕事は暑いですからきつく感じますが、錫はそこまできつくないです。
Q:トリンプさんから依頼があったときは驚かれたでしょうね。世相ブラはどうやって出来上がったのですか?
A:先方と共にテーマ、デザイン(桜の花びら)を決めて、私は錫製の曲がる材質でカップの部分を作らさせていただきました。
花びらが繋がった透かした感じと金属との融合に女性の繊細さが表現されていて、個性的で私も大好きなデザインです。
Q:まさか錫がこういう使われ方をするとはすごく奇抜なアイデアですね。
今回の取り組みから、女性の社会での、特に、ものづくりでの評価、ステップアップに繋がれば素晴らしいですね。
A:そうですね。毎回、期待を裏切らない個性的なデザインに私共の錫が使われるなんて、正直驚きましたが、完成するまでワクワクしました。ちょっとした発想や視点を変えることによって日本の製造業の素晴らしさが、わかりやすく伝われば、こんなに嬉しいことはありません。
Q:女性は細かな作業に適していると思いますが?
A:元となる原型が薄く柔らかい為、あまり力を加え過ぎず壊れない様に気を使っています。
又、生型が固すぎるとガスの抜けが悪くなるので、あまり型が固くならない様に気をつけています。冬になると金属の収縮率が高いので特に注意を払います。根気強く、忍耐が必要な箇所は、女性に向いているかもしれません。
Q:不具合を低減する為、一番気を使う工程を教えて下さい。
A:鋳込み湯の温度、入れ方は、金属が全てに行き渡るかどうかやガスが発生するかどうかが決まる大切な所です。生型作りや湯道を切る、原型を生型から取り出すような細かい作業が一番集中する工程です。
Q:今までで苦労された作品はどのようなものですか?
A:特注で、普段より大きな50cm×50cmの板、それから、プリンスホテル照明用の高さ70cmの筒状のものは苦心しました。
Q:ものづくりで一番大切なことは?
A:お客様、使い手のことを忘れないことですね。そこに意識をおいて、お客様が作品を手にされた時の様子を思い浮かべながら丁寧に一ケづつ気持ちを込めることですね。
Q:今後の展開、目標などは?
A:今、とても充実しております。
知り合いに結婚式の引き出物を依頼された時、この仕事をやっていて良かったと、やりがいを感じました。世界に一つのオリジナリティのある作品作りに喜びを感じながら、お客様に喜んでいただける限り、尽力していきたいと思っています。
取材ノート
とても落ち着いておられて、芯のぶれない女性だと感じました。
もともと、ものづくりが好きで、大学時代の恩師とのご縁で、鋳造業界に飛び込まれましたが好きな仕事をされて、しかもお客様が喜んで下さり、ご自身もやり がいを感じておられて理想の仕事ですね。 当社の産業向け鋳物は、一般向けと違い、お客様の声が聞こえてきません。品質第一でもくもくと作っているって感 じです。ですから、今回の訪問を通して、特に鋳造は3kの代表で衰退産業なのだと気落ちして卑下していた自分が恥ずかしく思いました。
製造方 法、材質、デザイン性の高さで同じ鋳造でも、こんなにスタイリッシュな製品が出来上がるなんて感動しました。最近では、雑誌などで、お洒落なコップだな~ と思っていると、能作さんの作品でした。こだわったクオリティの高いインテリアが求められる今世ですから。こんなに洗練された器などがきっかけとなって鋳 造という基幹産業のものづくりが世の中に伝われば、こんなに有難いことはありません。なんだか、鋳造って素晴らしいって改めて考えさせられました。下を向 いてた私ですが、まだまだ出来ることは残されているんじゃないか?自分で勝手に限界線を引いていたのではないか…….そんな気持ちにさせていただいた、光 がさしてきたような、鋳造業が元気になるようにもっと知恵を出さなくてはと考えさせていただいた貴重な一日でした。
ご多忙な中、当日の、前後の工程を気にかけながらも、答えて下さった杉浦さん(本当に鋳物が好きって感じました)、株式会社能作の皆様、本当に有難うございました。